サッカーを観る眼を養う『サッカースカウティングレポート 超一流の分析』小野剛

2014年はワールドカップイヤー。テレビや生でサッカーを観戦する機会も増えるということで、より楽しくサッカーを観る力を養える一冊をご紹介。

本の概要

スカウティングとは?

スカウトというと、若くて才能のある選手を探しだして自分のチームに勧誘するようなイメージがあるかもしれません。

この本のテーマであるスカウティングとは「対戦相手や自分たちを分析すること」です。アナライジングやリーティングと言うこともあるそうです。

サッカーにおいてスカウティングは、自分たちを強くする・相手チームに勝つ上で非常に重要な要素だと認識されています。

スカウティングに必要なのは「観る眼」

著者は、スカウティングで最も大事なことは「観る眼」だと書いています。

スカウティングにおいて最も重要なことは何か。私は迷わず、サッカーを「観る眼」を養うことだと答えます。スカウティングに必要なのは「観る眼」だけと言っても過言ではありません。

観る眼を養うためには、

  • 本物を観ること
  • 観るポイントを身につける

ことが大事。

そのために、プロは試合の中でどういった点を観ているのか、それを具体的な試合と選手を挙げて、解説しています。

アトランタオリンピック、フランスワールドカップでの戦いの裏側が今明かされる・・・!

本書の面白いポイント

スカウティングではどこを見ているか

読んで「おおー」と思ったのが、アトランタオリンピックで日本がブラジルに勝利したときのエピソード。

面白い実験があります。真後ろから「○○さ?ん」と呼ばれたとき、ほとんどの人は振り向く方向が一緒だそうです。誰にでも向きやすい方向がある。 そのせいか、片方からボールが来ているときはしっかり相手を同一視野でマークできるのに、もう片方からボールを入れられるとマークを見失ってしまう、そんな選手がいます。 そうしたマークのずれを突いたのが、「マイアミの奇跡」と呼ばれたアトランタ五輪のブラジル戦でした。ブラジルの最終ラインにいたロナウドは、まさにこのタイプ。ロナウドは左方向が振り向きやすかったようです。左サイドは問題なくマークをつかめているのに、反対の右サイドからのボールになるとすぐにマークを見失ってしまう。だから意図的に日本の左サイドから、しかも連携のよくないGKとDFラインとの間にクロスを入れるように仕向けていきました。

サッカーを「見るだけ」の素人が、ここまで観ていることは少ないのではないでしょうか。テレビで「本田がゴール!」「香川不調!」と表面的なことで騒いでいるのとは、まったくレベルが違います。サッカーの勝敗を決めるのは、選手の能力ももちろんのことながら、上で引用したレベルの刺し合いなのでしょう。読んでてグッときました。

スカウティングは情報を集めるだけでない

サッカーでスカウティングを行うコーチは、情報を集めて監督に渡せばいい・・・というわけではありません。

スカウティングは、指導者同士が105メートル× 68メートルの盤の上で壮大なチェスを行なうためのツールではありません。 何度も書いてきましたが、スカウティングの最大の目的は選手たちを堂々とピッチに送り出すことです。

とあるように、選手がピッチで輝くための涙ぐましい努力を沢山しているそうです。

たとえば、コーチが集まって「ミーティングで選手に話すための予行練習」を何時間もかけて行ったとか。国際舞台での戦いだからかもしれませんが、ミーティングのための練習までしたというのは驚きでした。

こういった、普段我々が試合を観ているだけではわからない、裏側での努力が沢山書いてあり、サッカーを視点と深さが増します。

読み識視点

自分が見ていたサッカーの狭さ

この本を読んで、いかに自分がサッカーを狭く見ていたかがわかりました。

あの選手はフィジカルが強いとか、誰がどこに移籍したとか。そういった表面の情報から広く、深くサッカーを見られるようになりました。

別に堅い内容がずっと書いてあるわけではなく、実際の選手の名前や特徴とともに解説されているので、非常にわかりやすい本でした。

中村俊輔(エスパニョール)と書いてあるあたりに若干の哀愁が漂います。

コーチとしての側面に、マネジメントに役立つアイディアも多い

サッカー観戦術、フォーメーションや選手の特性の見方が役に立つのはもちろんですが、加えてスカウティングをしているコーチが何を考えて動いているのかが面白い。

実際にプレーをする選手たちが最大限に力を発揮するために、様々な工夫でマネジメントしています。

選手たちをやる気にさせる本当のコーチとは、理論に裏付けられた説得力のある言葉を持つ人のこと。それともう1つが「人間力」、人を惹きつける力を持った人です。最終的に選手たちを動かすのは「あの人のためにがんばろう」という気持ちだったりします。 ですから、説得力のある言葉と「人間力」を持ち合わせたコーチが、選手の心臓をグッとつかむことができるのです。私自身、そういう人間に惹かれてきましたし、今でもそういう人間を信用しています。

ビジネスにおいてリーダーとして動いている人でサッカーが好きな人であれば、この本からマネジメントのヒントが多く得られるかもしれません。

サッカースカウティングレポート 超一流の分析

サッカースカウティングレポート 超一流の分析