『永遠の出口』 森絵都

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。第一回本屋大賞第四位作品。

永遠の出口、とは一見矛盾する表現に見える。終わりがないから永遠なのに。

けれども、主人公は確かにいくつもの永遠の出口を抜けて、成長していく。

”永遠”にめっぽう弱かった子供時代

この物語は、主人公の紀子が小学生から高校を卒業するまでを綴った物語である。

・・・というのは上で引用した説明文の通り。

小学生のころ、紀子は”永遠”という言葉にめっぽう弱かった。

姉に「あんなにすてきなもの(時には美味しいものなど)、紀ちゃんは永遠に見られない(食べられない)んだ。」と言われており、この言葉は紀子の焦らせ、失ったものへの思いを募らせた。

永遠に取り返せない恐怖から、限りある故の価値へ

そんな紀子は、あるときは担任になった黒魔女の支配と戦う。

あるときは、ぐれて悪い道に片足をつっこむ。

あるときは、恋をする。

それぞれの瞬間において、永遠とも感じられる幸福な状況・苦しい状況から、小さな出口を抜けることになる。

そして、高校卒業前の”ある出来事”をきっかけに、永遠に対する感情が変化する。

それまでは、永遠に・二度と取り返しがつかないことへの恐怖や焦りを抱いていたところを、限りがある故に今が輝いていることに気づく。

大人になることは、目の前の可能性を捨てること

紀子の成長を描いたこの物語の中では、私達の歩んできた人生と同様、沢山の「ターニングポイント」があった。

大人になる、ということは、このターニングポイント(さらに言えばすべての瞬間)に持っていた「可能性」を捨てることだと思う。

たくさんの可能性(=道)から1つを選ぶ。他の可能性は捨てるしかない。道は1つしか選べない。

子供の頃は「選ばなかった道」を思い悲しんでいた紀子も、物語の最後には「今この先に広がっている道」に目をむけることが出来るようになる。

しかし、この物語は「夢」や「希望」をキラキラと描いているわけではない。

私はもっと現実的な、「どんな道を選んだとしても、その道は枝分かれをしながら永遠に続いていく」というメッセージを受け取った。

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))