勝ち続ける自分をつくる『勝負論 ウメハラの流儀』梅原大吾

 

 

勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)

勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)

日本初のプロゲーマー、梅原大吾(ウメハラ)氏による『勝負論』。

本書は『勝ち続ける意志力』の続編であり、引き続き「勝ち続けるとはどういうことか」について述べられています。

本書の概要

一般の「勝ち負け」とウメハラ氏の「勝ち負け」

前作のタイトルは『勝ち続ける意志力』、そして本書のタイトルは『勝負論』。

ここでいう「勝ち」「負け」とは何なのでしょうか。

我々が一般的に想像する勝ち負けとウメハラの勝ち負けは異なります。。

「勝ち」=「成長する」、 「負け」=「成長しない」

とウメハラ氏は定義。

あるゲームに負け、反省をし、自分の中に良い変化、つまり成長があれば、それは勝ち続けられている状態にある。反対に、負けたことで腐り、ふてくされたり、たまたま運が味方して勝ったことで浮かれ、そこから何も受け取らずに成長しなかったりすれば、変化がない以上「負け」なのだ。(P36)

本書で言う「勝ち」とは、成長すること。そして「勝ち続けること」とは「成長を続けること」。

勝ちつづけるための「成長のループ」

勝ち続ける、すなわち成長を続けるためには、満足感が欠かせません。

勝負→成長する→楽しい→勝負→・・・という正のループに身を置くことが必要です。

しかし、成長するための努力をする上での障害が・・・

頑張ることを「ダサい」と決めつける、抜け駆けを許さない心理
何かを頑張ろうとする時、得てして周囲の視線が気になる。その理由は、抜け駆けが許されないという心理、そして仲間はずれにされるかもしれないという不安から発している。これは、子ども時代ほど顕著だと思う。(P54)

小学生なんかは、勉強を頑張っているクラスメートに対して「ガリ勉」などと言ってバカにしたりします。

そういった周りからの同調圧力に負けてしまっては、成長することは望めない。これに屈してはいけません。

ゲームセンターの格闘ゲームという、当時(ひょっとしたら今も)社会的には「暗い」「ワルの温床」「バカになる」というネガティブな印象を持たれていた世界を生きてきたウメハラ氏の言葉だけに、重みがある。

自分が楽しいと感じる、充実感が得られるのであれば、ひたすら続ける。これが勝ち続けることそのものなのです。

最後に勝つのは「回り道」をした者だ

梅田望夫氏の「ウェブ進化論」という本には、将棋の棋士である羽生善治氏による「上達の高速道路」の話が書かれています。

「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」(『ウェブ進化論』 P210)

ウメハラ氏の主張と一致します。

ネットの普及等の要因により、「ある一定レベルまで効率よく上達する」ための道は太く、万人に開かれています。しかし、効率重視では最終的に行き詰ってしまう。

効率重視の人間は、セオリーをそのまま、何も考えずに身に着ける(身に着けた気になる)ことが多々あります。

ウメハラ氏は効率重視の高速道路を進まず、あえて回り道をする。

どうして先人たちはそれをセオリーとしたのか。その答えを体感するには、自分できちんとセオリーと向き合うことだ。僕は、それが絶対の原則とはわかっていても、自分の頭で納得したくなる。これはムダなようでいて、とても大事なことだ。(P122)

セオリーを疑い、自分が納得できるまで検証する。そのプロセスを経ることで、セオリーが真に自分のものとなって身につく。

この間、「効率のいい人」はどんどんと先にいっているため、この段階でウメハラ氏が勝負をしても負けてしまうこともあります。

しかし、ウメハラ氏はそれにいちいち動じたりはしません。最終的に「勝ち続ける」のは自分であるという自信があるから。

成長こそが勝ちであり、勝負によって充実感のある成長を続けること、それこそがウメハラの勝負の流儀である。

読み識視点

前作に続き、万人向けの内容

プロゲーマーの書いた本ではあるものの、前作と同様ビジネスマンを中心に万人にとって得るもののある本です。

具体的なテクニックよりは気持ちの持ち方について書かれているため、読む側が「自分にとっての勝負とは何か」「自分は今までの勝負の中で、成長をしてこられただろうか」と内省をするきっかけになるはず。

本書を読んだ後では、今まで自分が「負けだ」と思っていたことにも「成長」という「勝ち」を見出すことができるようになるでしょう。

落ち着いた語り口でありつつも冷たさを感じないところは、やはり厳しい勝負の世界を乗り越えてきた「風格」を感じさせる。

前作「勝ち続ける意志力」を読んでいることを前提に話を端折っている部分もあるため、前作から通しで読むことを勧めます。

「日本の教育に一言もの申す!」で流れが断たれたのが残念

P104から上記の項目が始まる。この前後では「成長するために自分がどういったことをするか、どのような気持ちでいるべきか」が書かれています。

しかしなぜかこの項目だけが教育への提言になっていて、正直浮いてしまった感じ。

この項での主張は、ドリルを渡してただ「やりなさい」という教育ではなく、「〇〇を学んで身に着けることは□□の上で大事だから、このドリルをやりなさい」という、背景から順を追って説明するべきだ、ということ。

確かにこれは、ウメハラ氏が「効率重視」でなく「回り道」をしてこそ成長し続けられるという本書全体の主張とは矛盾はしません。

しかし、ここでは「教育を受けるこども」もしくは「教育を受けさせる親」にむけて、たとえ回り道をしてもその背景を考えられるようになるべきだ、という「読者が主体」の主張のほうがより自然だったように思います。

本書から何を学ぶか

成長にこそ価値(勝ち)がある

まずは自分の中の「勝ち負け」の定義を改める。

そうすることで、「勝ったか負けたか」ではなく「自分は成長できたか」という点に注目できるようになる。

そして、どんなに小さな成長でも自覚し、そこから充実感・満足感を得て、ポジティブなループを回すことが大事。

勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)

勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)